ビロードの口づけ 獣の森編


 なのにあの時に受けた衝撃まで胸に蘇り、同じ事をしている自分に嫌悪感を覚えた。
 あの時の二人と今の自分たちでは、立場も状況も違うのに。

 クルミはジンから逃れようと、ベッドに両手で縋りついた。


「やっ……いやっ……こんなのはいや……お願い……」


 先ほどまでの快感が苦痛へと変わり、目に涙が滲む。
 クルミの異変に気付いたのか、ジンが動きを止めて腰を掴んだ手を離した。

 クルミはそのままベッドへうつぶせる。

 クルミの横に座ったジンが、背中を優しく一撫でして静かに尋ねた。


「獣のように交わるのはイヤか?」


 傷つけた——?

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