ビロードの口づけ 獣の森編


 クルミは跳ね起きて即座に否定する。


「違います!」


 ジンの本性が獣でも、たとえどんな姿をしていても、ジンと交わる事自体にためらいはない。

 けれど——。

 クルミはジンから目を逸らして俯いた。


「ただ……」
「ただ?」
「あの日見たお母様とあなたの姿を思い出して……」


 自分では制御できない感情の記憶に、再び涙が滲む。
 ジンはクルミの肩を抱き寄せた。
 まぶたに口づけ舌先で涙を拭う。

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