ビロードの口づけ 獣の森編
コウが運び込んだ箱の中を珍しそうに眺めていたミユが、色とりどりの刺繍糸を見て目を輝かせた。
「きれいな糸ですね。何に使うんですか?」
「刺繍糸よ。知らない? ほら、こういうのを縫うの」
一緒に入っていた刺しかけの刺繍を広げてみせる。
大きな紅い花をかたどった刺繍を見て、ミユの目は益々輝いた。
「きれーい。色の濃淡も全部糸なんですよね? これ、奥様が縫ったんですか? すごーい」
「これを片付けたら、後で一緒にやってみる?」
「教えて頂けるんですか? きゃーん。嬉しーい」
ミユは満面の笑顔で、ピョコンと飛び跳ねた。