ビロードの口づけ 獣の森編


 唐突な申し出にミユが目を丸くした。
 そして案の定な展開にジンは声を荒げる。


「見境なしに女を口説くな! ミユ、そいつは挨拶代わりに女を口説くような奴だ。相手にしなくていい」

「失敬な。見境ならあるよ。彼女は君がクルミ様の側仕えにするほど優秀なんだろう? 見た目も愛らしくて申し分ない。充分すぎるほど素敵な女性じゃないか。私じゃなくても放っておかないと思うけどね」


 そう言ってライは、なれなれしくミユの肩を抱き寄せた。
 クルミよりも一回り小柄なミユは、安々と引き寄せられ困惑した表情でライを見上げる。

 目が合ったライは、輝くような悩殺笑顔でミユを見つめ返した。
 ミユは苦笑に顔を引きつらせながら、ライの身体を突き放す。


「あ、あの、申し出は嬉しいんですが、今はそんな場合じゃ……」
「そうだ、後にしろ」


 もっとも過ぎるミユの言葉に、それまで黙って見ていたザキがすかさず同調した。

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