ビロードの口づけ 獣の森編


 そして何事もなかったかのようにジンに要求する。


「巡視の近衛を増員してくれ。オレは森の中を捜索する。あの女の香りは強烈だから森の中にいるならすぐわかるはずだ。むしろ城内の方がオレには分かりにくい」


 クルミが城にやって来て、城内は彼女の甘い香りが充満していた。
 ジンが外に出る事を禁じたため、好奇心旺盛な彼女はミユを伴って城内を頻繁に動き回っているからだ。
 香りを辿って居場所を突き止めるのは困難だろう。


「じゃあ、城内は私が捜索するよ」


 ライがニコニコしながら引き受けた。
 鼻の利くライなら、わずかな香りの濃淡をかぎ分ける事ができる。

 ジンの指示を確認し、ザキは早足で出口へ向かった。
 その背中にジンが冷たい命を下す。


「ザキ、あいつにもしもの事があったら、犯人は必ず生きたまま捕らえて連れて来い。クルミを食ったり傷つけたりした奴は、オレがこの手で八つ裂きにしてやる」

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