ビロードの口づけ 獣の森編


「じゃあ、仕事に戻る」


 軽く告げてライと一緒に出口へ向かうザキにミユが駆け寄った。


「ザキ様、私を恋人にして頂けませんか?」
「え?」


 唐突な申し出にザキはもちろんの事、その場にいた皆が一様に面くらって声を上げた。
 ザキは困惑した表情でミユを見下ろす。


「おまえにアピールしていたのはライだぞ」
「ライ様はお断りしました。私はザキ様が好きなんです」


 気まずそうに視線を向けるザキに、ライは笑みを浮かべながら目配せをする。
 そして黙って部屋を出て行った。

 ザキはミユをへその辺りに見下ろして、皆が思っている素朴な疑問を口にする。

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