ビロードの口づけ 獣の森編


「なんでオレなんだ? ライの方が能力値も高いし女の扱いもうまいぞ。それにおまえとは今日初対面だと思うが、どこかで会ったか?」

「いいえ。今日初めてお会いしました。けれど獣王であるジン様に臆する事なく厳しく諫める毅然としたお姿に一目で虜になりました」

「え……」


 頬を上気させ目を輝かせながら訴えるミユに、ザキは絶句する。
 ザキにしてみれば、女がひとりいなくなっただけで冷静さを失ったジンがうっとうしくて苛ついただけではないだろうか。
 元々気の短い奴だ。

 苦笑を湛えてザキは頭をかいた。


「まぁ、微妙に誤解があるようだが、おまえの気持ちだけはありがたく頂いておく」


 やんわりと拒否権を発動するザキに、ミユの瞳が不安に揺れた。


「私ではご不満ですか?」

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