ビロードの口づけ 獣の森編
「……どうして一対一なんだ?」
「ジン様と奥様をお側で見ていて、とてもお幸せそうだから私もひとりの相手と深く長く愛し合えたらいいなって思って」
「うーん。あまりピンと来ないが、おまえは変わった女だな。おもしろい」
好感触を得てミユは飛び跳ねて喜んだ。
「きゃーん。じゃあ、結月が終わったら付き合って頂けますか?」
「あぁ、いいだろう。ただし、今のところ来年からおまえだけを見ているという保証はないけどな」
予防線を張るザキの鼻先をビシリと指差して、ミユは不敵の笑みを浮かべる。
「心配無用です。来年には私しか見えないようにして差し上げますから」
一瞬目を見開いたザキは、次の瞬間声を上げて笑った。