モルフェウスの誘惑 ※SS追加しました。
杜と美雨の前にかの子がいた

「かの子、何しに来たんだ?
こんなところで何してんだよ」

杜が語気を強くして言う

「あら、可愛い弟の顔を見に来たのよ
明日、オープンするここに来れば
きっと、会えると思ったわ」

「誰に聞いたんだ?
何の目的なんだ?
かの子、どうしたんだよ
幸せじゃないのか?
あいつはどうしたんだよ
あの、医者の…」

杜は今度は少し、優しい口調で聞いた
何故なら、かの子が尋常ではないと
判断したからだ
恐らく、常用している薬の作用かも
しれないと杜は咄嗟に判断した

「医者?
ああ、桂一郎の事?
どうしてるかしらねぇ
生きていればいいけれど」

「な、なんかしたのか?
かの子、どういう事だよ」

美雨はただ、黙って二人の
会話を聞いていた
いや、聞くことすらやっとだった

「桂一郎は、自分の立場を利用して
私に近づいた
そして、私ではなく
私のバックにあるものを手に入れたのよ
私はそのオマケ
一ノ瀬というブランドについてくる
ただのオマケ」

「何、言ってんのさ…
あの人、婚約者だろ?
かの子も好きになったんだろ?
だから、俺はあの時ーー」

「そうよ、
私は確かに桂一郎との未来を
選んだの
だって、仕方ないじゃない
どれだけ、好きな人がいても
その思いは叶わないんだもの…
だけど、漸く、解ったのよ
私が結ばれるのはこの人じゃない
私が共にいるべき人はーー
杜、あなたなのよ
私は気づいたの
なのに、なのに…
この女が邪魔をする
私と杜の汚れのない純愛を
この女が汚したっ」

かの子は鞄からナイフを取り出すと
その尖った先を真っ直ぐに










自分の首へと向けた


















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