モルフェウスの誘惑 ※SS追加しました。
「かの子、止めろっ」

杜が近づこうとすると

「来ないで」

かの子は驚くほど静かに言った
そして、美雨を見ると

「あなた、わかる?
私ね、今からこれで一気に
首を突き刺そうと思うの
かまわないでしょ?」

美雨はただ、ただ、
首を横に振るだけだった

「私にとって杜は永遠の愛なの
誰にも邪魔することが出来ない
神聖なものなの
だけど、あなた
いけない子よね
私の邪魔をするでしょ?
初めはね、じゃあ、
あなたをどうにかしちゃえって
思ったのよ
杜から遠ざけれればそれで良かった
だけど、そうすればするほど
杜とあなたの距離は縮まった…」

「えっ…それって、もしかして…」

美雨がやっとの事で
出した声は震えて途切れ途切れだった

「そうよ。
あなた、バカじゃないみたいね
あなたが今、想像した通り
この店をぐちゃぐちゃにしたのも私
あなたを襲わせたのも私
だけど、
やればやるほど上手くいかなかった
他にも計画してたんだけどね
日本の警察も捨てたものではないわ
ーーー違うわね
あの岡崎って刑事がスゴいのよね
私はいつの間にか岡崎という刑事に
目をつけられるようになって
少し、大人しくしてたんだけど…
情報だけは入るようにしてたの
簡単な事よ
犬を飼ったの
従順な犬をね
だけど、思い違いのようだったわ
信頼していた犬にね
噛まれたのよ私」

そこまでかの子が話すとーーー

「賢い犬はね
時に飼い主よりも仲間を
選ぶ時もあるんだよ
犬は本来、群れる習性を持っている
覚えといてよ、かの子姉さん?」

かの子が振り向いた先には
ドーナツの入った袋を持った神村と

かの子を真っ直ぐに見つめ

「物騒なものしまいなよ」

と言う美登がそこにいた






















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