モルフェウスの誘惑 ※SS追加しました。
「すいませんねぇ
僕までドーナツ分けて頂きまして
ささ、杜さんも美雨さんも…」
と、相変わらず飄々とした岡崎が
神村が買ってきたドーナツを
頬張っていた
今、店の奥のソファには
岡崎、神村がならんで座り
その向かいに
杜と美雨が座っていた
岡崎の到着により
かの子は署へと
連行されたのだ
長野から婚約者の
滝川が向かっているようだったが
美登が側についてやりたいからと
同じく署へと向かった
「なぁ、一体どういう事なんだよ…
俺は…
俺の知らないことがありすぎて…」
そう言いながら
美雨の手をぎゅっと握る杜
美雨は杜の不安が伝わってくる手を
握り返してやった
「あのぉ…お邪魔なようでしたら
席を外しますけど…」
神村が恐る恐る
申し出た
「いえいえ、神村さんも
被害者な訳ですから
お店襲撃されてますからね
どうぞ、いらしてください
それにドーナツ、ご馳走になっておきながら
邪険には出来ませんよね?美雨さん」
と、美雨に話をふる岡崎
どこまでが、本気なのだろうと
少し戸惑いながらも
美雨は頷いた
実際、岡崎の言うように
神村も被害者なのだから
いるべきだと、美雨は思った
「先ずですね
杜さんが
一番、気にしておられることですよね」
頬張ったドーナツを流し込むように
珈琲を飲むと岡崎は言った
「良いことなのか良くないことなのか
僕には判断しかねますが
確かに
杜さんとかの子さんは
血の繋がりがありません」
美雨はそっと杜の顔を見た
いつも通りの無表情では
あるけれど
そう見えないのは
自分の複雑な心境のせいなのだろうかと
美雨は心の中で呟いた
少なくとも、美雨にとって
この話は良くないことの
類いであった
言い表せぬ不安が
美雨にまとわりつき始めていた
そして
相変わらずの
マイペースぶりで
岡崎は話を続けた
「そしてですね
一ノ瀬家での
かの子さんと杜さんの
状況というのは
少し違います
ここで、一つ確認ですが
杜さんが現奥さまの実子では無いという…
おっと、口をすべらせすぎましたか?」
と、大して気にしている風もなく
岡崎が杜に確認する
「いや、構わない
特に隠すつもりもないし
隠そうとも思っていない
それより、どういう事だ?
どうして、
俺とかの子が、違うって」
杜は自分の生い立ちを
隠す気がないというのは本心だった
ただ、投げやりにそう思う
と言うのではなく
それが、事実だと
認めているだけだった
それに
この僅かな時間の流れの中で
自分の知らなかった
事実を知り、兎に角
気を落ち着かせようと
その事に集中していた
少なくとも
美雨には動揺する
自分の姿を決して
見せてはいけないと考えていた
「そうですか?
では、続けさせて貰いますね
かの子さんと杜さんと違う点についてですが
彼女は一ノ瀬夫妻の
どちらの子でもないのです」
「どちらの子でもない…」
杜が一人言のように呟く
「かの子さんは
一ノ瀬夫人の妹のお子さんです」
「妹?」
「ええ、そうです
実の妹さんです
と、言ってもですね
早くに亡くなられておりますので
杜さんご存知ないのは当然です
ましてや、あの継母が杜さんに話すとは…
いやいや、えぇっとですね
兎に角、
妹さんがいらっしゃったのです
そして、その妹さんは
体がとても弱い方でした
かの子さんを産み直ぐに亡くなりました
もしかしたら、かの子さんも体が弱いのは
その方の影響が多少は
あるやもしれませんね」
岡崎は紙ナプキンで口の回りを拭くと
「ここのドーナツは
実に旨いなぁ…」
と、呑気に呟いた
僕までドーナツ分けて頂きまして
ささ、杜さんも美雨さんも…」
と、相変わらず飄々とした岡崎が
神村が買ってきたドーナツを
頬張っていた
今、店の奥のソファには
岡崎、神村がならんで座り
その向かいに
杜と美雨が座っていた
岡崎の到着により
かの子は署へと
連行されたのだ
長野から婚約者の
滝川が向かっているようだったが
美登が側についてやりたいからと
同じく署へと向かった
「なぁ、一体どういう事なんだよ…
俺は…
俺の知らないことがありすぎて…」
そう言いながら
美雨の手をぎゅっと握る杜
美雨は杜の不安が伝わってくる手を
握り返してやった
「あのぉ…お邪魔なようでしたら
席を外しますけど…」
神村が恐る恐る
申し出た
「いえいえ、神村さんも
被害者な訳ですから
お店襲撃されてますからね
どうぞ、いらしてください
それにドーナツ、ご馳走になっておきながら
邪険には出来ませんよね?美雨さん」
と、美雨に話をふる岡崎
どこまでが、本気なのだろうと
少し戸惑いながらも
美雨は頷いた
実際、岡崎の言うように
神村も被害者なのだから
いるべきだと、美雨は思った
「先ずですね
杜さんが
一番、気にしておられることですよね」
頬張ったドーナツを流し込むように
珈琲を飲むと岡崎は言った
「良いことなのか良くないことなのか
僕には判断しかねますが
確かに
杜さんとかの子さんは
血の繋がりがありません」
美雨はそっと杜の顔を見た
いつも通りの無表情では
あるけれど
そう見えないのは
自分の複雑な心境のせいなのだろうかと
美雨は心の中で呟いた
少なくとも、美雨にとって
この話は良くないことの
類いであった
言い表せぬ不安が
美雨にまとわりつき始めていた
そして
相変わらずの
マイペースぶりで
岡崎は話を続けた
「そしてですね
一ノ瀬家での
かの子さんと杜さんの
状況というのは
少し違います
ここで、一つ確認ですが
杜さんが現奥さまの実子では無いという…
おっと、口をすべらせすぎましたか?」
と、大して気にしている風もなく
岡崎が杜に確認する
「いや、構わない
特に隠すつもりもないし
隠そうとも思っていない
それより、どういう事だ?
どうして、
俺とかの子が、違うって」
杜は自分の生い立ちを
隠す気がないというのは本心だった
ただ、投げやりにそう思う
と言うのではなく
それが、事実だと
認めているだけだった
それに
この僅かな時間の流れの中で
自分の知らなかった
事実を知り、兎に角
気を落ち着かせようと
その事に集中していた
少なくとも
美雨には動揺する
自分の姿を決して
見せてはいけないと考えていた
「そうですか?
では、続けさせて貰いますね
かの子さんと杜さんと違う点についてですが
彼女は一ノ瀬夫妻の
どちらの子でもないのです」
「どちらの子でもない…」
杜が一人言のように呟く
「かの子さんは
一ノ瀬夫人の妹のお子さんです」
「妹?」
「ええ、そうです
実の妹さんです
と、言ってもですね
早くに亡くなられておりますので
杜さんご存知ないのは当然です
ましてや、あの継母が杜さんに話すとは…
いやいや、えぇっとですね
兎に角、
妹さんがいらっしゃったのです
そして、その妹さんは
体がとても弱い方でした
かの子さんを産み直ぐに亡くなりました
もしかしたら、かの子さんも体が弱いのは
その方の影響が多少は
あるやもしれませんね」
岡崎は紙ナプキンで口の回りを拭くと
「ここのドーナツは
実に旨いなぁ…」
と、呑気に呟いた