文学少女と秋の空
「何の本読んでるの?」
静かな教室に澄んだ声。
前の椅子が音を立てて動き、そこにドカッと座りこちらを見る男。
良く言えば人当たりが良く、悪く言えば軽い男に見える彼は、クラスメートの矢神 空(やがみ そら)
いつも皆の中心で笑っている印象がある彼は、私にとって『邪魔』と感じる人。
皆が居る時に騒いでいるのは良い。
どこにでもムードメーカーは必要だ。それによって、教室が平和に過ごせるならそれで良い。
しかしながら彼場合。
ある日をキッカケに放課後になる度に私の邪魔をするようになった。
放課後の静かな時間を狙っているのに、
彼は、その時間に割り込んでくる。
「…………」
返事もせずにパラリとページを捲る。
彼が居るのに気付いているが、文字から目は離さない。