思春期の恋






違っ・・柊ちゃんて呼ぼうとしたわけじゃなくて・・・



でも私、柊司のことなんて呼べばいいんだろう。


【柊司】って勝手に頭の中では呼んでいるけど、


実際にそう呼んだことはないし。




じゃ・・・麻井くん?




なんだかそれも変な感じだ。




「なに?」





ゆっくりと私の前まで戻ってきた柊司のワイシャツを指差した。




「そこ・・・ごめん。私の血がついた」




柊司は自分のワイシャツを引っ張って眺めた。



「あぁ・・・こんなの別に・・」




「うちに寄ってよ。洗うから」




柊司はズボンのポケットに両手を突っ込んだ。



「いいよ。じゃあな」






そして、100歩先の自分の家へと


歩いて行ってしまった。





家に寄ってって・・・結構勇気出して言ったんだけどな・・・



もう、ずっと5年以上うちに来てなかったから。




そっか。やっぱこんなもんか。




私と柊司の関係なんて。



もう気軽に家に上がってもらうような関係じゃない。



久しぶりにしゃべって私・・・




また、あの頃みたいに


いや、せめて普通に話すぐらいに戻れたら・・・なんて、



やっぱ無理か。


なんだろう・・・この気持ち。





なんかちょっと


振られたような気分だ。








私は片足を引きずりながら、


家の中へと入っていった。










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