† of Human~人の怪異
気付けば、

「もう一度言います、桜庭くん」

上野楓が、古風なこしらえの黒い剣を、手にしていた。

両刃の刀身と柄、そして横一文字の鍔、すべてが闇を吸収したかのように、黒一色。

柄尻に埋め込まれている石だけが唯一、暗中で光る猫の目のように、透明な青さを見せていた。

フォン、

と空気の唸りも鋭く儚げに、図書委員が剣を振った。

その切っ先が、先ほど彼女が発した粛正という言葉のもと、委員長へ向けられる。

「教会の条約に違反しています。ただちに、凶行をやめてください」

痛みを押しこらえているのか、桜庭は今まで高く笑っていた唇をきつく噛み締めていた。

「教会とか条約とか……だから、意味がわかんないんだよ」

彼の両腕が、ズルズルと縮小して、人の腕に戻る。

手首から先は、なくやっていた。

が、

「だけど、こればっかりは言える。上野さん、答えはNoだ」

彼の両手は、一瞬で再生した。

教室を埋め尽くさんばかりに再び膨張した大蛇の双頭が、その瞳をぎょろりと上野へ向ける。
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