Who am l?


両手をジーンズのポケットに突っ込んだまま、こっちに歩いてくる男は、その汚い唇で私を呼んだ。


「――風香。」


体はまだ、動かない。
まるで、立ったまま金縛りにあったみたいだ。


「久しぶり。」


男は前まで来ると、私の手を取って廊下へと引っ張った。
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