Who am l?
嘘
「お先に失礼しますー 」
校舎を出るまでに、五十回は言ったかもしれない。
まず、職員室で二十回ほど。
校長室で十回。
廊下で先生に会うたびに二十回。
そして、あと数歩で今までの疲労の分のとんでもない快感が、きっと私を包み込むのだろう。
学校の門が一歩先に迫ったところで、ふと立ち止まってみる。
私、南 睡蓮が勤めるこの日野高校の門は小学校の門と何ら変わらない、錆びた古ぼけた門だ。
だがこの門のこっち側とあっち側では、私の心境はまるっきり違ったものとなる。
あっち側の快感と、こっち側の疲労では私にとっては天と地ほどの差だ。
こんな古ぼけた門のクセに!と毎回思うが、逆にこの門を出る快感が、私の1日の楽しみでもある。
そして、その楽しみは今日だけ早めにやってきた。