Who am l?
目を閉じて、1つ深呼吸する。
そして快感へと足を踏み出したその時。
私の横を何かが通り抜けていった。
あまりの唐突さにバランスをくずし、よろけてしまう。
危うく古ぼけた門に頭をぶつけるのを免れたが、私の思考はさっき横を通り抜けていった「何か 」に向けられていた。
「ちょっと、危ないだろ!」
と叫び、前を見るとずっと先に小さい華奢な後ろ姿があった。
耳のところで二つに結わかれた長い髪の毛は綺麗な三つ編みになっていて、走るたび、左右に揺れている。
見間違えるはずはない。
あれは、峰子だ。
「…」
私は首を回した。
動きにともなって首がなる。
長い間、パソコンと向かいあっていたせいだろうか。
いや、そんな事よりも!
何故、ここに従兄弟であるはずの峰子がーーー…
それに、峰子が横を通り抜けていったとき、一瞬であったが、確かに見えた。
峰子はーーーー泣いていた。