† of Ogre~鬼の心理
一拍で呼吸を整えてから、付箋を電話のように耳へ当てた。

「はい、こちら僕。なんなんだい、いきなり」

《ぬぁに悠長に喋っとんだ、このブォケ。ダァホ、与っ太者め》


『ボケ』ではなく『ブォケ』ときたか。しかもそこへ追撃の『ダァホ』と『与っ太者』のダブルパンチだ。すばらしい強調のアクセントまで入っているし。

……これは相当痺れを切らしているのかもしれない。仁はすぐに態度に出る。我慢をしない性格だから。

ただ、こっちにだって言い分はある。

「怒らないでくれよ仁。いきなり通信してきた君にだって非はあるよ? 今は幸い人のいないところだったけど……僕は職場にいるんだ。こんな付箋が喋っているの、同僚に聞かれたらどうごまかせばいいことか」

《そん時ゃ、新開発の超薄型通信装置だとでも言っておけ》

超薄型、ね。

紙切れレベルのケータイなんて開発できたら、その企業は大儲けだろうに。

第一、そんな無理矢理な言い訳、いったい何歳児向けだろうか。

いっそ素直に「マジックです」とか冗談にしてしまったほうが、まだ信じてもらえそうだ。
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