† of Ogre~鬼の心理
付箋の向こうで仁が大きな声を出した。それは、非常階段の上下にまでわんわん響いていく。

なにか非常にこんがらがっているようだけど……仁は人の名前や顔をあまり覚えない。

どうせいつもの、「そいつがだれだか思い出せない」という悩みだろうから……今はもう放っておく。

「まあ、なにはともあれだけど」

やんわり抑え込むように言いながら、駆け足で階段を上へのぼった。

「仁、たぶん君も僕も、ヤツと真輝ちゃんの状況を理解する重要な鍵を握ってる。でも悠長にはしていられない。情報交換は移動しながらだ」

《ああ。向こうじゃ、お嬢さまが息せいひっぱり奮闘中だしな。あのバカめ、結界も認識阻害も施さずに〝鬼姫〟をさらけ出すなんぞ……説教が要るな》

「そうだね。でもお灸を据えるのはあとだ。作戦通り、僕が現場に行くよ。――仁?」

《大丈夫だ、俺は現場に行かなくても魔法陣くらいは起動できる。補佐は任せろ》

「もちろんだよ。信頼してるからね」

そうして、屋上に到達する。
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