† of Ogre~鬼の心理
乾いているものの、白い塗料が手につきそうな、しかも金具のやたら軋む分厚くて重い鉄扉。それを開けた先は、晴れ渡る六月の空だった。

警察署は二十階にもなるから、結構な高さだ。風が強く、吹き回っていた。

署は中心街の南寄りにある。立地条件もさることながら、建物自体も高いから、その眺望はかなりのものだった。

ここからなら、中心街西区に完成予定の大木ホーンタワーほどとは言わないけれど、市を見回すこともできる。

貯水タンクや室外機の密集する区画を抜け、南区を眺めるふちに、足をかけた。

「仁」

と合図を送る。

《応さ》

と耳の付箋から返ったのは、魔術師であり魔法使いである〝千約〟の声。今は、魔術師の顔だろう。

《我、草薙仁、大木市南方に『領域』を定義する。公式『結界』を起動。及び、『隠蔽』の公式を追加。我、草薙仁の『目録』に登録される者への認識阻害をなせ。これを『秘境』と定義する》

現象は、紅蓮のラインが地上や空中で何重何層にもほとばしり、それらが組み合わさるという形で、見て取れた。もっとも、その光は人間には見えない。
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