† of Ogre~鬼の心理
それに見とれる間もなく、ナイフを拾って、跳んだ。ついさっきまで足があった場所へ、不可視の刃が殺到する。

凶暴な猛禽の嘴が集中したかのように抉れたアスファルトを、私は着地した信号機から見下す。

今の、無数の一撃を放った女どもが揃って、私を見上げてくる。

《この、鬼めが!》《なんという!》《調子に乗ってもらっては困るわ!》《ここで祓ってくれます!》《覚悟なさい、東城!》《〝鬼姫〟!》

使命に怨嗟と屈辱感をない交ぜにした声が、私を罵倒する。

それらすべてを睥睨し、傾聴しながら、

(〝鬼姫〟――その呼び名を、否定はしない。私は鬼だ)

いったん、

(けれど)

まぶを閉じた。視界を闇へと落とす。

声と殺気が、

《人に仇なす人外め!》《聖音のもとに!》《わたくしが祓う!》《去ね!》

私を叩いてくる。

信号の上から跳んだ。

女の撃ち放った無数の刃が今度は信号の照明に着弾し、これを路上へ落とす。

ガラスが砕けて鉄板がねじれる盛大な音がした。まるで嵐に曝されたような有り様だ。
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