ハニー・トラップ ~甘い恋をもう一度~

「遼さん、食べないの?」

梓の顔を見ながらじっと動かなくなってしまった俺を見て、心配そうに顔を覗き込む。
こんな顔を見せるから、少しの時間も離れたくなくなってしまうんだ。
それでも何とか自尊心を奮い立たせると、目の前の美味しそうな朝食に目を向けた。

「さっ、食べるか。このオムレツ旨そうだなぁ」

俺が一口食べると、待ってましたと言わんばかりに梓もパンに手を伸ばす。

「このパン、このホテルに入ってる有名なパン屋さんのだよね? 一度食べてみたかったんだ」

焼きたてのまだ温かさが残っているパンにバターを塗り、満面の笑みでそれを頬張る姿を見ているだけで幸せな気持ちが込み上げてくる。
俺はもう、梓のどんな姿を見ても愛おしいと思ってしまうんだろう。
まさしく俺は、彼女に“溺れて”しまったみたいだ。

「ランチ用に、いくつか買って帰るか?」

「うん、そうするっ」

嬉しそうに身体を揺すり、鼻歌を歌いながらまたパンを一口食べる。

(まるで子供みたいだな……)

梓の姿に満足しコーヒーに手を伸ばすと、ソファーの方で携帯が鳴り出した。

「遼さん、携帯鳴ってる」

「あぁ、雅哉からだな」

出るのを一瞬躊躇ったが、梓にそう言われて立ち上がりソファーまで急ぐと携帯を手に取った。 

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