ハニー・トラップ ~甘い恋をもう一度~
「おはよう」
改めて、梓の心に響くように囁く。
「おは……よう、遼さん」
ちょっと腑に落ちない顔をしながらもそう言うと、触れるだけのキスを俺に返してくれた。
今の梓にはこれが精一杯らしく、照れたような素振りを見せると布団を手繰り寄せ胸元を隠しながら起き上がった。
「もう起きないといけないんでしょ? そんなにゆっくりもしてられないよね……」
またそうやって寂しそうな顔をして、何回俺の気持ちを煽れば気が済むんだ。
梓は何の気なしに言ってるんだろうけど、こっちの身体のことも考えてくれよ。
ガクッと項垂れて下半身を見れば、俺の心とは正反対に元気になっているモノを見て苦笑した。
梓の身体のことを考えて、朝食はルームサービスを頼んだ。
「大丈夫!」と言う彼女の言葉を振りきってルームサービスにしたのは、身体のことだけが心配だったわけじゃない。
誰にも邪魔されず、二人の時間を過ごしたかったから───
このあと年末までは、店が最高に忙しい時を迎える。
予約もたくさん入っているし、毎年閉店時間はあっても無いようなものだった。
こんなふうに梓とゆっくり過ごせる時間は、どう考えても少ない。
週末は店に来てくれても雅哉たちがいるし、もちろん営業時間中はお客様が第一だ。
店を閉店させて片付けを終え、さっとシャワーを浴び梓を抱きしめて眠るのが関の山だろう……。