ハニー・トラップ ~甘い恋をもう一度~
そして神父様の前に到着すると、私を眩しそうに見つめる遼さんと目が合った。
その遼さんが一歩足を踏み出し父の前に立つと、私は父の腕に絡めていた腕を解いた。
「遼くん、梓をよろしくお願いします」
「はい。任せて下さい」
二人のこのやり取りには、さすがに堪えていた涙も、もうどうすることも出来なかった。
瞳からポロッと溢れた涙を、近寄った遼さんがそっと拭ってくれる。
「大丈夫?」
小声で聞く遼さんに黙ったままコクンと頷くと、「どうぞ」と出された腕にそっと自分の腕を絡めた。
二人で歩みを揃え神父様の前まで行くと、厳かに儀式が始まった。
神父様がゆっくり分かりやすく話を始めると、緊張感が高まってくる。
そしてそれがピークを迎えた時に誓いの言葉が始まってしまい、自分の番が来た時「は、はい……誓いまっす」なんて、噛んでしまった。
参列者から笑いが起こり肩をすくめると、遼さんが「場が和んだな」と優しい笑顔。
苦笑してみせると、神父様も苦笑した。
指輪の交換は何度か練習したおかげで滞り無く無事進み、目線を落としてその指輪が納まっている指を見ると、嬉しさが込み上げてきた。
これで本当の夫婦になったんだとしみじみと感じていると、神父様の「誓いのキスを」の声が聞こえた。
一度治まっていた緊張が、再び戻ってくる。
遼さんと向かい合い上目遣いで見上げれば、溢れんばかりの笑顔を送ってくれ、そっとベールを上げられた。
緊張で渇いた唇をペロっと舐めると、それを見ていた遼さんがニヤリと妖しく微笑んだ。
えっ? まさか?
と思ったら時遅く……。
遼さんの唇が重なり、誓いのキスには似つかわしくない濃厚なキスを、参列者の皆さんに披露してしまった。