あの時の約束
受験日に出会った。出会ったのは二月二十四日。
出会った時はぎこちない挨拶だった。
合格発表の時も出会った。初めて一緒に帰った。
入学説明会の時。
「おはよう真衣」
「おはよう怜寺」
その時うちは嬉しかった。初めて名前で呼んでもらえた。
初めて名前覚えてもらった。
心の奥に隠してた気持ち。鍵をかけて忘れてた気持ちが蘇って来た。
このは優しい人。怖く無い。大丈夫うちは怜寺が居るから変われる。
それから何日か経つと他の男子と仲良くしていた。
うちが同級生を好きに慣れたんも怜寺のお陰。
「佳龍の手暖かいね」
「そう?真衣の手も暖かいよ」
「えっそれは佳龍のお陰だよ」
「早く来いよ」
『うん』
この時の自分は無邪気に笑っていた。この時の自分は何も知らなかった。

「佳龍これあげる」
「ありがとう」
「この甘い香りチョコだね」
「うん。だって今日バレンタインだよ」
「そうだったホワイトデーにお返ししないと!何が食べられへん?」
「ピーナッツ、ナッツ、アーモンド、胡桃、ミルキーかな」
「判った。じゃあそれ以外にするね!」
「うん」
キスをした。
離れた所から声が聞こえた。慌て離れた。
「おはよう原田、真衣」
『おはよう怜寺』
「原田、真衣何か赤くない?それも「おはよう」て同時に言った」
「そんな事無い」
「そうだよ気のせいだよ」
「焦ってる」
「焦って無い」
「焦ってる」
「焦って無いもん」
「怜寺真衣をからかうんはアカンて!」
「ごめん」
「もう知らない」
「ごめん、ごめん」

「真衣あげる。今日ホワイトデーやから」
「ありがとう佳龍!」
「見て良い?」
「うん」
うち開けて見た。
「苺チョコだ!うちの大好きなのや」
「喜んでもらえて良かった!」
「佳龍ー大好き」
「ありがとう俺も真衣大好き」
キスをした。うちはドキドキが止まらない。嬉しさが止まらない。

三月二十三日金曜日後悔する切っ掛けが始まりを告げた。
「真衣の事好きだけど別れよ」
「えっ」
言われる言葉を判ってしまった。
どうして判ったの?
「鶴橋、鶴橋です。…」
扉が開いた。うちはパニックになって走りだした。電車を降りて改札口まで走った。
近鉄に乗り換えた。
ピロロン、ピロロン
メールを見た。
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