雨、ときどきセンセイ。
「やっぱ、変わったやつ」
「それ、“特別”って意味で捉えときます」
いくらかセンセイへの返しにも慣れて、私はにっこりと答えた。
ゆっくりとセンセイが傘をおろして、閉じる。
雨粒のせいか、校舎やセンセイの車が輝いて見えた。
キラキラと。
太陽を反射させるものがたくさんで、私は一瞬目を細める。
視界が狭まってる時に、すっと手を差し出された。
ああ、傘を畳んで差し出してくれたんだ。
「すみませ……」
その傘に手を掛けたけど、センセイは傘を手放さない。
不思議に思って、手元からセンセイへと視線をあげようとしたら、もう片方の手が伸びてきた。
「……?」
その手のひらの意味がわからなくて首を傾げると、センセイは言った。
「ケータイ、貸せ」
「あ……はい」
言われるがまま、ケータイをその手に乗せると傘を返された。
パパッと操作するセンセイの手がちょうど目の高さの位置。
綺麗な手。
この手を毎日見てきたんだなぁ。
なんて考えていたら、すぐにケータイを戻された。
それを受け取ってセンセイを見上げる。
「……とりあえず、ご希望の番号をいれといた」
「……電話……しても、いいの?」
「じゃなきゃ、なんのためのケータイだよ」
「くくっ」とセンセイは笑って言った。
手の中のケータイをぎゅっと握る。
本当に、また、センセイの声が聞けるんだ。ケータイ(これ)でいつでも。
「じゃ、いい加減帰れ。バス、そろそろじゃなかったか?」
「あ! ほんとだ」
ケータイのディスプレイで時間を確認した私は、後ろ髪引かれる思いでセンセイに背を向けて歩き出す。
ちらりと振り向くと、センセイはポケットに片手を入れて、もう片方の手で“早く行け”と私を促した。
そして校門付近まで歩き進めた頃、駐車場へもう一度目をやると、そこにはもうセンセイの姿はなかった。