雨、ときどきセンセイ。
雨は上がってる。
何にも遮られることなく、クリアに聞こえたセンセイの告白。
今の3つの音、ずっと忘れない。
耳に、目に、頭に、肌に、心に。
この瞬間を刻み込みたくて静止していると、センセイが珍しく照れているようで。
「そんな息も忘れるくらい、信じられないか?」
少し赤くした顔をふいっと背けて、わざとぶっきらぼうな口調でセンセイは言った。
「そういうつもりじゃなくて」
「ああ。そうだ。その証拠……だなんて言うのもなんだけど、さっきのアレ」
「『アレ』?」
「ああ。捨てておいて」
一瞬なんだろう? と思ったけど、すぐにその存在を思い出して私は制服のポケットに手を入れた。
「そうだ。結局これ、返しそびれて……」
って、え?
コレを『捨てて』だなんて……。
私は手のひらの上にあるものから、驚きと困惑の顔でセンセイを見た。
「別に強がりとかじゃない。俺も今日、“卒業”したから不必要なものだ」
センセイの言ったことは嘘じゃないってわかるし、信じてる。
だけど、私の手の中にある“それ”の鈍い輝きはあまりに存在感が大きくて。
「だったら……だったら、私が貰ってもいいですか」
逸らしていた顔を私に向けたセンセイの表情は、“鳩が豆鉄砲をくらった”ような顔。
「センセイが捨てたつもりなら、いいですよね……?」
「ああ。別に構わない、けど……」
この時のセンセイはさすがに『わからない』って顔に出てた。
そりゃそうか。
センセイの過去の想い人から貰ったものって知ってて、それが欲しいだなんて。
「別に呪いかけたりとかしないですよ」
「いや、そんなことまで考えちゃいないけど…」
私の突拍子もない返しに、センセイは拍子抜けしたようで、苦笑してた。
冗談はそれくらいにして、私は真面目に答える。
「なんか、もうコレすらも……センセイの一部なように思うから。この人との時間を経て、今のセンセイがいて。そして、そのセンセイが私の隣を選んでくれた。きっと、それもこの想いがあったからこそ、そういう答えを出してくれた気がするから」
このクリップが、本当のセンセイに出逢わせてくれたから。