菜の花の君へ
あわてて洗顔を済ませて京田の姿を捜すとl倉庫にあった敷物などを片づけているところだった。


「す、すみません!京田さん・・・すっかり寝坊しちゃいました。
起こしてくだされば、私・・・。」



「おはよう。余震もなくなったからね、みんな朝食用のパンは食べずに持って帰るって人も多くて、君に起きてもらう必要もなくて。

ずいぶん気持ちよさそうに寝てたし、休息とってもらって講義に出てもらわないとね。申し訳ない。」



「そんなぁ。京田さん真面目すぎますーーー!
講義のノートは友達に電話してとっておいてもらえばいいし。」



「あのさぁ。僕はいちおう教授目指してる身の上なわけで~ね。
受けられる講義を疎かにされるのは、やっぱり嫌だなって思うんだ。

それに朝のパンかじってあと30分ほどまでに電車に乗れば、ご心配されてるお兄さんにも顔を見せられるんじゃないかな。」




「えっ、どうして兄の出かける時間まで知ってるんですか。
・・・・・まさか、電話あったの?」



「うん。けっこうたくさんね。
ほんとに心配しておられるから早く帰ってあげなさい。」



「もう、ご迷惑おかけしちゃってすみません。
だけど、京田さんにお会いすることなんて、もうなくなっちゃうわ。」



「そうだね。ん~と、すぐ忘れると思うけど携帯番号がこれと、中尾隆興教授の部屋にだいたい詰めてると思うから・・・。」
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