菜の花の君へ
智香子は自分の部屋で溜息をついた。
高校生のときも似たようなことはあったけれど、その時の和之は担任という責任もあってか怒っても智香子に高圧的な態度はとらなかった。
しかし、ここ最近の和之は「ほれみたことかと」上から目線な上に、完全に智香子に対して保護者モード全開である。
(私はずっとこんな人を思い続けていたんだわ・・・。)
ひそかに温めていた小さな恋はもう壊れたに等しい。
そんな気がしてきた智香子だったが、その頃和之が何をしていたのかまだ知る由もなかった。
「・・・・・すまない。もう俺はいないと思ってくれ。
俺には俺の家庭がある。・・・あ、結婚はもうすぐしようと思ってるから。
おまえにはほんとに申し訳ないと思っている。
けどな、俺は施設から引き取ってもらったときから、こっちの家族の一員になったんだ。
おまえには苦労ばかりかけた。せっかくこうやって連絡もくれているのに、行けなくてごめんな。
親戚たちには心配ないようにおまえから説明しておいてやってくれ。
俺はそちらの財産はすべて放棄するから大丈夫だ。」
和之はそういって電話をきった。
「よし・・・これで迷いはなくなった。」