菜の花の君へ

千夏は和音に言いたいことはそれだけか?のような口ぶりで口をきく。


「あなたに危害を加えたと思われる重役ならびに社員は解雇しました。
まだ少しは残っているかもしれませんが、私のいうことをきいてくださるなら、私が完全にあなたを守りきってみせますわ。

私は先代の社長からどうしても来てほしいと頼まれて社に入りました。
そして、あなたがあまり率先してやってこなかった役員、社員たちのパイプ役、情報役をしてきました。

それは会社にとっていちばん必要である社員と社員の家族の普通の生活のためです。
みんな幸せにするとまでは言えませんが、普通に心おだやかに生きられるためです。

自分の身が危ういからと簡単に会社を放り出してしまう社長のしりぬぐいをしているのも私です。

ですから、私の言うことをきいていただけないとおっしゃるのなら、和音さん。あなたを訴えます。」



「訴える?僕は何も不正などやっていないけどね・・・。」



「はたしてそうでしょうか?
常務の家に脅迫状めいたものを投げ入れたり、ライバル会社に新しいデザインを運び入れたり、古い取引先をさしおいて、売上げが微々たる店なんかに会社のお金を横流しのようなことをなさった。

普通の人間ではできないような鬼の所業ですわ。

まぁ実行犯はお母様にしてあるんですから、不正などやってないと言い続ければいいだけなのでしょうけどね。

でも・・・いろいろと証拠ってあるところにはあるものなのよ。ふふっ」



「なんてやつだ。母の出した損害など、十分すぎるくらい返してあるはず。」
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