菜の花の君へ
和音の顔が青ざめ、息も荒くなっている。

すると、千夏は週末に出直してくるから、いい返事をしてほしいと言って出ていった。


「くっ・・・。女狐め。
きっと、あの様子だと内部が壊れて負債が大きくなっているに違いない。

しかし・・・会社の手助けをしろと迫るだけならまだしも・・・結婚なんて・・・。

僕は秘書とそんな関係になどなったことはないし、そんなそぶりもお互いなかったはずなのに。」



智香子は自分にはわからない世界のことに、いきなり和音の結婚話が出て、自分はどういう身の振り方をしていいのか、ぜんぜんわからなかった。


「あの・・・和音さんは訴えられるんですか？」


「そうなるかもしれない。
会社もやめて、これからなときに・・・クソッ。

でも智香は心配しなくていい。
親の呪いで沈むのは僕だけで十分なんだから、絶対、君には迷惑がかからないようにするから。」



「迷惑なんてかかってもいいです。
それよりも、和音さんの身が心配です。

お仕事のことは学生の私にはぜんぜんわかりませんけど、社員の人の生活は守ってあげられたらいいなとは思います。
たくさんの社員がいる会社だから、和音さんの才能があればかなりの人は助けられそうだと私にもわかります。

でも・・・やってくるなり結婚してっていうのは・・・。なんかびっくりで。」


すると、和音は俯いた智香子の顎に手をかけ、上へ持ち上げるなり智香子の唇にキスをした。
< 84 / 116 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop