菜の花の君へ
翌朝、2人がまだ朝食もとっていない時間から和音の元秘書だった平永和紗が自宅に押しかけてきた。
「和音ぉーーーー!あの女狐がとんでもない行動に出たもんだな!
でも、俺が来たからにはもう大丈夫だぞ。
今の内情を調べ上げて、対策も考えたし、ちょっとだけ手も打ってきた。
ちょっとだけ金がかかるかもしれないけど、あの女と結婚する必要なんかなくなったからな。」
「どういうことなんだ?」
「あの女、ずっと前からおまえの考えたデザインをずっと親の会社のパソコンにデータを送ってた。
それも公表されるわけのないはずの、落書きのメモにいたるまでだ。
田所の親父は装飾品のデザイナーだったらしいが、ヒット作といえるものすらない。
だが、おまえの落書きを手に入れてからそれを利用して似たようなデザインを施して会社を大きくしていった。
そしてそれだけにとどまらずに、如月織物の役員にまでなった。
つまり、おまえに何か絵を描かせてしまえば、そこから田所は枝葉をつけていくだけで大儲けできたというわけだ。
でもそうはいかなくなって、焦げ付きだした会社にどんどんダメージが起こり始めたのには対処不能になってしまった。
そこでまわりはどう動いたか?
田所にすばらしいデザインへの期待をかけたというわけだな。
もともと実力も気力もない田所は4日前に自殺未遂を起こした。
だから彼女は躍起になっているわけさ。」