ふるさとの抵抗~紅い菊の伝説4~

抵抗

 青く光る瞳を持った少年が走っていく。
 その手には青白く光る剣が握られている。
 そう、それは『伝承者』として目覚めた啓介の姿だった。既に彼の中には迷いはなかった。彼の存在はただ『紅い菊』を滅ぼすためにだけそこにあった。
 剣は語った。
 既に『紅い菊』は、その宿主の力を凌駕し、外の世界に解放されつつあると。そして、そうなってしまった場合、『紅い菊』は人類に対して強大な敵となることを…。
『伝承者』として目覚めた啓介は一刻も早く『紅い菊』を滅ぼすために、彼女の向かう先へと走っていた。その速度はとても人の出せるものではなかった。通常は封印されている人間の力を全て解放しているようだった。そのために彼を止めるものは何もなかった。
 啓介としての意識は完全に『伝承者』に支配されていた。心の奥の方に封じ込まれ、身動きさえ出来ない状況にあった。それは『紅い菊』が美鈴の意識を封じ込んでしまうことに似ていた。
 どちらも自分の望んでいない未来へと突き進んでいた。
 やがて『伝承者』は『紅い菊』の意識を捉えた。そして走る速度を更に上げていった。
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