ふたり輝くとき
「好きじゃありません!」

唇を噛んで、涙を堪えているサラ。

また、だ――

ユベールの前で涙を流すことを拒むサラ。ユベールへの憧れはとっくに恋に変わっているのに認めないサラ。

なぜ、ユベールの思い描くお人形になってくれないのだ。

「僕たちは夫婦なんだよ?君が僕を好きなのは当然じゃないの?」
「愛がないとおっしゃったのはユベール様です。私も、それでいいと言いました。でも、貴方を好きになるとは言っていません」

そうだ。サラのことを何とも想っていないと言ったのは確かにユベールで。でも。

「ダメだよ。君は僕の妻で、僕のシナリオ通りに動くお人形なんだよ。僕が好き、そう言えって言ってるんだよ!」
「そんなのめちゃくちゃです!」

ああ、もう……何もかも訳がわからない。

「めちゃくちゃでも何でもいいよ!君は僕が好き。それは事実でしょ!どうして認めないの――」

パシン、と。

乾いた音が響く。それと同時にユベールの頬を掠めた何か……痛いのは、どこだろう。感覚が麻痺したのは、本当にサラだけだったのだろうか。
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