ふたり輝くとき
――数十分前。

サラの気を辿って中庭に行けば、アンナとロランがサラの身体を引っ張り合っていた。サラから漏れる気は膨れ上がるばかりでユベールは大声で叫んだ。

「サラ!それ以上力を解放してはダメだよ!」

だが、それは逆効果だったようでサラの気が一層乱れたのを感じた。それはどんどん激しくなって、目も開けていられないほどの光を放つ。

「っ、アソンブリール」

呪文を唱えて視界を陰らせると、サラが芝生に片手をついて、もう片方の手で口元を押さえていた。サラの白い手から鮮やかな赤が滴り、綺麗な緑色のはずの草を真紅に染めていく。

「サラっ!」

ユベールが駆け寄るのと同時に意識が途切れたようで、サラはふらりと倒れこんだ。それを受け止めたら全身にサラの気が電流のように流れ込んできた。

サラの額に手を当てて気を吸収したけれど、量が多過ぎてユベール自身が耐えられそうになかった。

他人の気は性質が違うため、自分の気と反発してしまうのだ。少量であれば簡単に抑えられるのだが、サラのように強い気とこの量ではユベールでさえどうにもできない。

「ああ、もう!オンフェルメール」

舌打ちをして、咄嗟に唱えた呪文は密閉の呪文。本来は光の壁を作って攻撃から身を守るものだ。だが、外側からのものを通さないということは、内側からのものも外へ出て行かないはず。

ユベールが吸収しきれない気はどんどん外へと漏れていく。そして、ユベールの思った通りサラの力はユベールの光の壁の中で爆発した。

「ぐっ……」

ユベールはギュッとサラの細い身体を包み込んで衝撃を耐えた。
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