ふたり輝くとき
原因がわからないわけじゃない。サラの身体は、確実にチャクラ移植の影響で壊れてきている。だが、それがわかったところで治せるクラドールがどこにいるというのだ?

思いつきのような実験――死んでも構わないとすら思われて行われた実験――に、その糸を解く方法など最初から考えられてすらいないだろう。創った本人もすでに存在しない。生きていたとしても、治せるかどうかも怪しい。そんなものは原因がわからないのと同義だ。

クリスティーナは只ならぬ事情を察したのか黙り込み、しばらく2人とも何も言わないまま……サラの苦しそうな呼吸だけが聴こえて。

「ごめん。でも、うちのクラドールも治せなかった。ルミエールのクラドールは全員マーレの人間だって、君も知ってるでしょ」

ユベールは小さく声を出した。

ルミエールでは、クラドールの育成は行っていない。いくら教育を整えたところで育たないのだ。光属性の気は、身体に入れると電流が走るような感覚を引き起こす。クラドールのトラッタメントには不向きだ。

「クリスティーナ、君はもう戻った方がいいんじゃないの?また城を抜けて来てるんでしょ?」
「でも……」

心配そうにサラを見つめるクリスティーナは、その場を動こうとはしない。

「それから、もうここには来ないで」
「どうして――」
「助けてくれたことは感謝するよ。でも、これは僕たちルミエール王国の問題だよ。君がこれ以上関わるとやっかいなことになるって、わかるでしょ?」

ユベールがそう言うと、クリスティーナはキュッと唇を噛む。彼女は自分の立場をしっかりと心得ている。公務の場での態度からそれは十分にユベールにも伝わっていた。
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