ふたり輝くとき
「ごめん……大きな声を出して」

ユベールはサラの頬に自分のそれを寄せた。片手で流れ続けたままの水を止める。

「僕が言いたかったのは……あんな誰が選んだかもわからないドレスを着ないでってこと」
「……はい」

頷いたサラがかすかに顔を動かして、ユベールと視線を合わせた。ユベールは赤く小さな唇に誘惑されてその甘さを味わった。

細い腰をしっかりと抱き、頬に手を添えて深く……求めていく。

「サラ……」

唇を離して、彼女の身体を反転させた。サラの瞳が潤んでいるのは、ユベールの熱のせい。

「可愛い……ねぇ、今なら泣いてもいいよ?」
「いじ、わる……ばっかりです」

そう言って唇を尖らせたサラをギュッと抱きしめた。

「君にだけだよ……」
「絶対、ですよ?」

ユベールが「うん」と答えると、サラもユベールの背中に手を回してくれた。

「ねぇ、買い物に行こっか?君にもっと似合う服を、僕が選んであげる」
「無駄遣いはダメなんですよ?もう、私もユベール様もお姫様と王子様じゃないんですから」

サラの言葉にユベールはクスッと笑う。

「でも、君は僕のお姫様だよ。この先もずっと……そうでしょ?」
「はい、王子様」

そんな会話をする甘い朝。出かけるのは午後からになりそうだと考えながら、ユベールはサラを抱き上げて寝室へと舞い戻っていった――
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