ふたり輝くとき
ユベールが身体を起こし、サラは乱れた服を直してキッチンへ向かい、すぐに小さなプレートを持ってきた。

そこには、小さめのハートのケーキが乗っていた。綺麗にチョコレートでコーティングされ、マジパンでつくったらしい可愛いバラがちょこんと飾ってある。

「遠い国では、バレンタインは女の子がチョコを好きな人に贈る日なんだそうです。だから、私も……その、やってみたくなって」

はにかみながらお皿を差し出すサラは、やっぱり可愛くて。

「そういうの、ずるい」

いつもユベールのことをずるいとかイジワルだとか言うくせに。

ユベールは添えられていたフォークを手にとってケーキを掬った。そして、サラの口元に持っていく。

「食べさせてくれるんだよね?」
「え……?これじゃあ、逆で――んむっ」

サラの小さな口にチョコを詰め込んだなら。

「いいんだよ。これで……」

フォークもお皿もテーブルへ。ユベールはサラに“食べさせてもらう”のだから。

甘い、甘いキスをして――…
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