ふたり輝くとき
「ふふっ、本当に正直な子だね。今、ユベールのこと考えている。違う?」

ロランが笑うと、サラの頬が赤く染まった。

「ご、ごめんなさい」
「構わないよ。サラはユベールの妻なんだから」

サラはきっとユベールを好きになりかけている。憧れはすぐに恋へと変わるものだ。特に、サラのような純粋な、何も知らない娘の初恋というのは総じてそんな憧れから始まるもの。

どうせユベールは婚約してから結婚式までの間、サラに優しくしてこの初心な娘の反応を楽しんでいたのだろう。

ユベールが優しい王子様だと、儚い夢を見たサラには現実を受け止めることが難しいだろうことも容易に理解できる。現に、彼女はこうして中庭の隅で1人それに耐えようとしていた。

(どうしようかな……)

ユベールが早々に優しい王子様を演じることに飽きたというのなら、ロランがそのポジションをもらおうか。そうしたら、サラはロランに憧れの王子様を見ることができる。

簡単に、堕ちてくる。

「サラ……俺が、君を奪ってあげようか?」
「ロラン様――っ」

ロランはサラを抱き寄せた。サラが胸に両手を当てて身体を離そうとするけれど、その細い腰をしっかりと抱きしめて離さない。
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