君と、世界の果てで
「はぁ……」
思わずため息が出てしまった。
「どうかしました?」
「……どうもしねぇよ」
「彼女さんと、喧嘩でもしたんですか?」
「な、何で……」
お前はエスパーか!
「ライブの時、いらっしゃいましたよね。美人で大人っぽいひと」
「……大人じゃねぇ。ガキ並みのワガママ娘だ」
「イブに用事ができたから、怒られたんでしょう?」
「はぁ?」
「すみません、あたし、後で気付いたんです。
そういえば、恋人がいらっしゃったなぁって」
……こいつ、たまに嫌味だな。
「まぁな……でも、いいんだ。
多分、別れるから」
申し訳なさそうな顔をした深音が、ハッと俺の横顔を見た。
「まさか……本当に、ライブが原因で?」
「ちげぇよ。気にすんな」
深音があまりに心配そうな顔をするので、くしゃくしゃと頭を撫でてやった。
艶やかな黒髪が、俺の手のひらで絡まる。