君と、世界の果てで
俺には作れないな。
こんな現実離れした歌。
俺なら…………
「あぁ?コレは……」
楽譜の棚に、見覚えのあるモノを発見した。
「げっ」
コレ、俺のじゃねぇか。
古い五線紙のノート。
やめる前に陸にやった機材一式の中に、入ってたのか。
パラパラと、ノートのページをめくる。
それは、俺の書きかけの曲を残したままで、使われた形跡はなかった。
ぼんやりと、考えてみる。
俺なら。
深音に、どんな歌を歌わせるだろう。
目を閉じる。
窓の外から波の音が聞こえる。
「……やっぱ、ダメか」
頭には、何も浮かばなかった。
すると急に、息苦しくなって。
五線譜を、壁に叩きつけたい衝動にかられた。
しかし勢いで投げつけたそれは、吹き抜けの方に飛んでいき、一階へ落ちていった。
「きゃんっ」
「!?」
一階から、子犬のような声が聞こえて、驚く。
しかし、俺以外に勝手にこの家に入れる人間は決まっていた。