君と、世界の果てで


「お姫様、今日はどうしたの?お忍びなの?」


「そうよ。今日は、お城を抜け出してきたの」



女の子の若い母親が、すみません、と後を追ってきた。



「……この人は、元はなんだったの?」


「あぁ?」



俺を差した指を、慌てて母親がつかんだ。



「コラッ、邪魔しないの」


「ねぇ、何だったの?カボチャ?ネズミ?」


「すみません、この子、シンデレラのDVDを昨日見たばっかりで」



ははぁ。


お姫様の家来は、魔法使いが魔法で作るべき、か。



「違うの。この人はね、実は王子様なの。

隣の国の、王子様。

バレるといけないから、変装してるの」



誰が王子だ!


俺は飲みかけたコーヒーを、噴きそうになった。



「何でバレたらいけないの?」


「お姫様には、決められた婚約者がいるの。

でも本当は、この王子様が好きだから、こうしてたまに、お城をぬけだして、会いにくるの。

お姫様のお父様が知ったら、それはお怒りになるから」

< 190 / 547 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop