君と、世界の果てで
「お姫様、今日はどうしたの?お忍びなの?」
「そうよ。今日は、お城を抜け出してきたの」
女の子の若い母親が、すみません、と後を追ってきた。
「……この人は、元はなんだったの?」
「あぁ?」
俺を差した指を、慌てて母親がつかんだ。
「コラッ、邪魔しないの」
「ねぇ、何だったの?カボチャ?ネズミ?」
「すみません、この子、シンデレラのDVDを昨日見たばっかりで」
ははぁ。
お姫様の家来は、魔法使いが魔法で作るべき、か。
「違うの。この人はね、実は王子様なの。
隣の国の、王子様。
バレるといけないから、変装してるの」
誰が王子だ!
俺は飲みかけたコーヒーを、噴きそうになった。
「何でバレたらいけないの?」
「お姫様には、決められた婚約者がいるの。
でも本当は、この王子様が好きだから、こうしてたまに、お城をぬけだして、会いにくるの。
お姫様のお父様が知ったら、それはお怒りになるから」