君と、世界の果てで
「じゃあ、俺に何かあったら、父さんと母さんを頼む」
「はぁ?マジで?
ヤだよ!俺絶対、会社なんか継がないからね!
殺されても、死ぬなよ、兄貴は」
「何だそりゃ」
いつもの軽口。
いつもの表情。
何故かそれが、急に不安定に思えた。
「……良かった」
「は?」
「ううん、何でもない」
陸は、ふるふると頭を横にふった。
そして、俺の袖を、そっと離した。
「ありがとね。バイバイ、兄貴」
笑顔で言うと、背を向けて、家に入っていった。
何故か、その笑顔が。
泣き顔に見えた。