君と、世界の果てで
翼さんと初めて会ったライブの日の後で。
陸に誘われて、ここに来る途中。
その日は晴れてて、星がたくさん見えたの。
綺麗だねって言っても、陸はうつむいたままだった。
「陸、どうしたの?
お兄さんにほめてもらえたんでしょ?」
「うん……でも、もう最悪だ」
「何で?」
「前から好きだった人が、婚約しちゃった」
「……それって、お兄さんの彼女さん?」
「……違うよ」
陸は、綺麗な顔を自虐的に歪ませて、あたしを見つめた。
「俺がずっと、ずっと好きだったのは……」
その茶色かかった瞳に、涙がうっすら浮かんで。
あたしに、秘密を囁いた。
多分陸も、お墓まで持っていきたかった秘密を。
「深音、内緒にしてね。
深音だから、話すんだ。
深音だから、聞いてほしい。
俺が好きなのは……堺沢翼。
兄貴なんだ」