君と、世界の果てで
簡素なベッド……とも言えないような、
冷たい台に横たわる何者かに、白い布がかけられていた。
刑事が、手を合わせる。
そして、顔にかかった布を、静かに取り去った。
「陸……!」
父さんが、うめき声をあげた。
そこに横たわるのは、間違いなく陸だった。
19年見続けた顔だ。
間違いない。
やたら長い睫毛。
形のいい、鼻と唇。
透き通るような銀髪。
両耳に、これでもかと開けられたピアス。
「発見が、早かったので……綺麗な方です」
何だそりゃ。
死体に綺麗も汚いもあるか。
陸。
陸。
昼間、会ったばかりなのに。
ぶわ、と視界が霞む。
それが涙のせいだと自覚するのには、時間がかかった。
耐えられず、手で顔を覆って、父さんが先に部屋を出ていく。
母さんに、何と報告するつもりだろう。