君と、世界の果てで
彼女のカップを持つ白い手が、微かに震えだす。
「二階で、あの書き置きを見つけました。
嫌な予感がして、陸に電話をしましたが、出ませんでした。
だから探しに行こうと、外へ出たんです。
そうしたら……」
当時の事を思い出したのか、深音はうつむいて、苦しそうにため息をついた。
「倉庫から、音が聞こえたんです」
「どんな……」
「歌です。
聞いた事の無い曲でした。
日本語でしたけど。
ライブ音源なのか、ひどく音が割れてて……」
すみません、関係ないですね、と深音は一口、コーヒーを飲んだ。
「倉庫の鍵は、開いてました。
そこで、……見つけました。
ケーブルを切ろうとしたけど、届かなくて……
すぐ、警察を呼びました」
言い終えると、彼女はまた深いため息をついた。
「そうか……辛い思いをさせて悪かったな」
「いえ……あたし、何もできなかったから……
せめて、お話だけでも、ちゃんとしたいです」