君と、世界の果てで
睡眠障害。
うつ病。
たったそれだけで、人は死んでしまうのか。
運良くそういう類いの病気になったことはないし、
生前の陸の明るい様子からは、想像もできなかった。
「じゃあ、金銭トラブルとかも……」
「ありませんでした」
ふと、陸の首に残されたアザを思い出した。
ケーブルとは別の、赤い何かの痕。
「……誰かに恨まれたりとかは……?」
「聞いた事ありません」
「ホラ、あいつモテたから。
痴情のもつれとか、他に女がいたとか……」
そこで深音は、初めて俺をにらんだ。
たった一瞬だったが。
次の瞬間には、ふっと苦笑したまま口を開いた。
「……それを、私に聞きますか?」
透き通った声が、脳に響いて。
やっと、自分の発言が、失言だった事に気付いた。
「いや、悪い……
どうしても、自殺だと信じたくなくて……」
思わず本音が出てしまった俺に、深音が、静かに言い返した。