君と、世界の果てで
「……では、陸は誰かに殺されたと言えば、翼さんは、救われますか?」
「……っ」
「誰か悪役を作って、憎めたら、楽になりますか?」
全てを見透かすような、黒い瞳。
いつの間にか、自分が責められる立場にいる。
「図星つくなよ……」
やけに喉が乾いて、コーヒーを飲み干した。
「誰かのせいにしたい。それもある。
でも、俺は見たんだ。
陸の首に、ケーブル以外の痕がついてるのを」
「……何ですって?」
深音は、大きな目をますます大きくして、俺を見返す。
「指を押し付けたような、痕があった」
「まさか」
「あったんだ。
警察は、陸自身の指の痕だろうって……」
俺は深音に警察とのやりとりを説明しながら、ふと思い出した。
「あっ」
脳裏に浮かんだのは、最後の陸の姿。
棺の中、ピックを持った長い指。
「指には……痕が無かった……」
「陸の親指に、ケーブルの痕が無いと、おかしいはず……」
俺と深音は、顔を見合わせた。
「「誰かが、陸の首をしめた……」」