危険すぎる大人だから、近づきたくなる

危険すぎる大人

「ねえね、この色ちょっと老けて見えるよね。私的にはもっと明るい色が良かったんだけど……。これさぁ、選んだの、誰?」

「いいか、俺から離れるな」

 車が停車したのは、1時間近く走り続けてようやく到着した山の奥地にある、お城のように豪勢な洋館のエントランスだった。なぜこんな山奥にこんな立派な建物があるのか実に怪しい。

 建物自体はまだ新しいようで、足を踏み入れると、中は高級ホテルと変わらない造りになっている。

 ロビィで案内された部屋で着替えた後、連れて行かれたのは大広間。立食式のパーティが開かれているようだが、こんな時間に大勢集まっているなんて、やっぱり怪しい。

 本当は、仮面パーティとか、乱交パーティだったりして……。

 葛城から何の説明もない分、次々に仮説が頭をよぎった。

 私は言われた通り、葛城の後を追うようにずっと付いて回っていた。周りはセレブそうな人ばっかりだし、外国人のボディガードみたいな大男も隅で待機していて、やはり、とてもただのパーティとは思えない。

 頼りの葛城はというと、挨拶まわりをしているようだった。相手が外国人のときはちゃんと英語で喋っている。やっぱ、バカじゃないんだ。

 それも少し慣れてきて、テーブルの上の美味しそうな食べ物にも目が走りはじめた、その時。

 突然、照明が下り、室内は真っ暗になった。ざわついた人声が会場を満たし、私は慌てて葛城の右腕を握った。だが、利き手が悪かったのか、すぐに左腕に持ち替えられて。

 停電? じゃないよね……。もしかして、主催者の演出? スライドショーでも始まるのかな……。

「うわっ!」

「わあぁぁぁぁぁ!!」

 男の人の大きな悲鳴。それに伴って、ざわめきが一段と増した。どの辺りから悲鳴が聞こえたのだろう……。

「走るぞ」

 突然右腕がグイと引っ張られ、引きずられた。

 ……って、どこに!?

 訊ねる間もなく、とにかく足を前へ出す。腕を取られているから仕方ない。

 着慣れないドレスだったが、裾にはスリットが入っていたし、靴もローヒールだったので、どうにか奴に付いて廊下に出られた。

「わッ!!」

 前で腕を引っ張っていた葛城が、急に振り返る。そして、左胸に抱え込まれた。太い左腕でしっかりと体を掴まれ、余計なことが頭をよぎってしまったため、前を向くのが遅れた。
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