結婚しました!
音々の大きな瞳は、

振り返り俺を見つめて不安で揺れていた。


「ずっと一緒に決まってるだろ。」

そう言って笑うと、


「はい。」

そう言って口角をきゅっと上げた。


「分かりました。それではこちらに。」


カチャリと開けられた隣の部屋は白い無機質な空間に

ベッドがポツリと置かれて、

中庭の植物が、緑色の影を落としていた。


「申し訳ないね、ここはあまり使われてない部屋なので、

 掃除が行き届いてなくて。」

なるほど、なんとなく空気が埃っぽい。

「昔はね、いろんな患者が来たからね、

 ここも使われていたんだけど、

 今は、私の仮眠室になってます。

 見ての通り暇なので使ってませんがね。」

そう言って厚いカーテンを音を立てて引いた。


空気は埃っぽいまま、部屋の中は、

音からも、光からも遮断され


ひとつの空間になった。







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